sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

出張日記 (後編)

sayakot2009-11-03

緊張した面持ちで、この3年間のプロジェクトの歴史を一生懸命に説明する代表者たち。
各グループから集めてきた商品のサンプルを一つ一つ取り出し、先月の営業研修で特訓した通り、相手の表情を注意深く観察しながら、商品のセールス・ポイントを説明する。


ホテル側の担当者であるA氏はまず、商品に共通についているグリーンのラベルに、興味を持った様子。ラベルには、プロジェクトのロゴ、ミッション、商品の取り扱い方、実際に制作した女性個人の名前が記入されている。路上のお土産屋ではなかなか見られないもの。


最初こそ、ちらちらと不安そうにこちらを見ていたグループの代表者たちは、商談が中盤に入る頃には、まっすぐに相手を見て、自分たちの言葉で、作り手としての想いを語るようになっていた。A氏は何度もうなずきながら、耳を傾けている。時折り起こる談笑に、思わずこちらの胸が熱くなる。


そしてA氏はふと、木の実と蔓を使った天然のナプキン・リングに目をとめ、手元に置いてあったナプキンを器用に折ってリングで留めて皿の上に載せ、それがどのように顧客の目からどのように映るか、持ち上げたり、斜めから見たりして、確認を始めた。これは、わたしも大好きな、T村の商品。木の実は村の森で採集されたもので、ちゃんと数日間冷凍庫に保存するかたちで、防虫加工を施している。A氏がウェートレスに何かを言いつつけると、すぐにレストランのマネージャーらしき人物が現れて、ひそひそと話が始まった。間違いなく、いいサイン。


結果、その場でナプキン・リング100個を受注。納期は3週間後。また、その他のバッグ類についても、お試しということで、付属のブティックに置かせてもらうことになった。
また、2件目の営業先である一泊700USDという高級ホテルでも、なかなかの手ごたえがあり、翌日までにまとめて発注書を送付するとの答えをもらう。


デビュー戦は、手加減なしに、100発100中。
商品開発の段階からグループを育て上げてきたプロジェクトのアメリカ人コンサルタントC女史は、当然でしょうと涼しげな表情を見せつつ、実は興奮を隠せないでいる。A氏をはじめ、先方の担当者たちに言わせると、今まで取引のあった民芸品業者は、インフォーマルなものが多く、注文の度に、サイズやデザインが変わったり、販売記録がきちんと管理されなかったりして、商談相手として信頼に足りる生産者は貴重なのだとか。価格のハードルは間違いなくネックになっているけれども、今後の展開の可能性は、まだまだ確実にありそう。


夜は、滞在先のホテルの一室で、反省会。顧客ごとに、振り返る。
もちろん今後の課題は、山積み。受注したはいいけれど、大変なのはその後のフォロー。
まずは、物理的な距離。彼女らのコミュニティから、メリダまではバスで約2時間。大荷物を持っての移動もさることながら、交通費も決して安くはない。そして何より、グループによっては、インターネットどころか電話も通じない。そんな中で、これからは、代表者が取りつけた注文を、確実に伝達し、期日までに生産・納品できる体制を整えていく必要がある。


「○○村の図書館には、無料のパソコンがあったよね?」「村にEmailの使い方を知っている人はいる?」「うーーん。甥っこに頼めば分かるかな・・・」「じゃあ、今度基本的な操作を教えてもらって、出来れば1日おきにメールをチェックするようにしないとね。大丈夫、簡単だから。」「グループ全体の口座が必要だね」「口座って、持ったことないけれど・・?」「口座があると、お金を管理するのにとっても便利だよ」「村から一番近い銀行はどこ?」


そんなやりとりが、今回大躍進のあった営業と、同時並行でされている段階なのが現状。
日本のビジネス感覚だと、うーん大丈夫・・・?と思われるかもしれないですが、これでも確実に前に進んでいるのです。これだけの障害の中で、少なくとも彼らには、なんとか活動を継続させようという意思があって、手探りながら、仲間たちとの話し合いを何度となく設け、つい先日も、プロジェクトの支援のもと、グループの集まりとしての法人格を取得したところ。体制作りのための今後の日々の活動がキイですね。



国際協力関係のキャンペーンでは、よく、「1日○ドル以下の生活をする人々の数を減らすこと」、そんな指標を見聞きしますが、今回の経験を通じて、ただ収入が上がればそれでいいというものではなくて、そうした収入向上の活動を通じて、人々が自分の力に自信を持って、自分たちの人生に、様々な選択肢を自ら作り上げられるようになること、それが一番大事なのではないかと思いました。


マヤのコミュニティに生きる彼女らにとって、外の社会と言うのは、激しい波のうねりのようなものなのかもしれないけれど、ただそれから逃げるように、ひっそりと息をひそめて生きるのではなく、マヤとしてのアイデンティティに誇りを持ち、自分たちの意思で2つの社会を自由に行き来できるような土台づくりを支援していくこと、それがこのプロジェクトの意味なのかもしれません。



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写真は、プロジェクト商品の一つ。大好きな職人さんCの作品。
結婚式とかのパーティドレスに合いそうだと思いませんか♪