sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

Kiva ナイト☆

sayakot2008-11-16

ごぶさたしています。
卒業報告も、アンコールワット旅日記も、北京の様子も、帰国のご挨拶もせず、本当にごめんなさい。。。


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11日3日に北京から帰国し、その翌日から仕事がスタート。
これまでの1年間半のレイジー&クレイジーな日々と比べると、電車に1時間半揺られて始まる毎日の生活は、「ちょっとした」環境の変化です。ベトナムでは現地でお世話になった日本人駐在員の方たちに、「日本の生活に今さら戻れるかねえ〜?」と散々脅されたものですが、久しぶりの都会生活に日々ドキマギしつつ、意外になんとかなるものです。


さて久しぶりのエントリーは、最近のある出来事について。
以前にもこのブログでご紹介した、Kiva.orgという団体、覚えていらっしゃるでしょうか(1月23日http://d.hatena.ne.jp/sayakot/20080123より)。インターネットのプラットフォームを通じ、わたしたち一般の人々が、貧困を脱出するために初期投資を必要とする途上国の特定の個人に対して、少額の資金を簡単に融資できる仕組みを築いた非営利組織Kiva。2005年の設立以来、Kivaに共感する世界中の個々人から25ドルずつ集められた、50億円近い額が、途上国の借り手たちに届けられ、返済率98%という高さを維持してきた。


その活動は、「普通の人々が世界を変える方法」として、NY Timesの記事や、クリントン元大統領のスピーチで取り上げられ、日本でもNHK日経新聞等で特集された。ITという現代的な手法を使って、これまで先進国のほとんどの人が決して想像することのなかった、途上国の人々との「絆/つながり」を、鮮やかなほどリアルに浮かび上がらせたKivaは、「相互につながっている感覚 “a sense of inter-connection”」こそ、平和な社会づくりのベースではないかと感じ始めていたわたしにとって、まさにモデル・ケースのようなプロジェクトだった。


そして先日。
Kivaの設立者でありCEOであるMatt Flannery氏と、思いがけず対面が実現した。
彼の初来日に際し、わたしの大学時代の同期であり、Mattスタンフォード大学ビジネススクールで同期であった友人が、いつか機会があれば紹介するよ、という1年前の約束を守ってくれたのだった。1年前、コスタリカのキャンパスで、Kivaのサクセス・ストーリーに胸を膨らませながら、自分の企画書を書いていた頃を思い出しながら、この日、ハナキンで賑わう渋谷にて、Mattと早朝まで、飲み、語り、飲み、語ることが出来たのは、とてつもなくエキサイティングで、どこかとても非現実的な体験だった。


MattがKivaを起ち上げたのは、27歳のとき。マイクロファイナンスの名を世界に知らしめたグラミン銀行のユヌス氏の講演に刺激を受け、当初はウガンダのあるコミュニティに住む貧しい女性たちを支援するために始まった、彼の小さなプロジェクトは、ほんの数年のうちに、世界中の人々を「つなぐ」巨大なプラットフォームに進化した。そして、インターネットどころか、自分の姿さえ写真で見たことさえない途上国の人々に、世界のどこかの誰かがネットを通じてローンを提供する、そんなことが可能になったのだ。Matt曰く、ローンを受ける人々は、その仕組みをすべて理解しなくても、世界のどこかの誰かが、貧困を抜け出したいという自分たちを支援してくれようとしてくれている、ということを心情的に理解するのだという。(※Kivaとやりとりをして実際の事務手続きをするのは、現地で活動する既存のマイクロファイナンス団体であり、このパートナー団体が、借り手たちにローンの使い方や返済方法を指導する。カンボジアで活動するSave the ChildrenものKivaパートナー。)


ところで、Kivaを起ちあげたとき、マイクロファイナンスのことはどれだけ知っていたの、と聞くと、彼はあっさり、大して知らなかったよ、とあっさり。(もちろん謙遜もあるだろうけれど。)そして、大真面目に、知らなかったことが逆に良かったのだ、とも言い切った。「もし知りすぎていたら、きっと途中で怖くなって、今のKivaはなかったかもしれない――」と。まずはアクションありき、というのは、いかにもシリコンバレーのエントレプレナーという感じもするが、いったん走り出してみて、支障が出たらその都度、走りながら修正する、それがまさに彼のスタイルなのだ。「君もなにか想いを持っているのならば、走り出すのは早いほうがいい――。考え込んで研究者になったって、答えは永久に出ないよ、きっと――。」優しい笑顔で彼はそう言った。


マイクロファイナンスは、貧困削減の強力なツールではあるけれど、Matt自身も認めるとおり、それ単独でパーフェクトな魔法の道具ではない。Kivaに限らず、マイクロファイナンスそのものに対する懐疑的な意見も当然ある。ローンの運用、返済方法について、パートナー団体は、果たしてどこまで借り手たちを監督・サポートできるのか?弱肉強食のアンバランスな経済構造の中に、借り手たちを組み込んでいるだけではないのか?


自分なりの「善意」が、相手にとって必ずしも良い結果をもたらすわけではない、というある種の不安は、ポスト・モダンのドツボにハマってしまったわたしに常につきまとう感覚で、それゆえに、わたし自身、数々の決断を(ヒヨッて)見送ってきた。歴史を見れば、誰かの絶対的な信念の結果が、常に社会全体に好ましい結果をもたらしてきたとは思わないけれど、同時に、「強烈な主観」で、鮮やかに社会を動かしている人を前にすると、やはりシビれ、ジェラシーさえ覚える。そして、自分の求めているもの、恐れているもの、それに混乱する。


この日の夜、Mattと出会った、この興奮を分かち合いたいと、大学院時代のインドネシア人の友人に報告したら、『刺激的な成功者の話を吸収するのには区切りをつけて、そろそろ君自身のビジョンを形にしてみたらどうだい』と、からかうように返ってきた。ぐさり。。。
一進一退のわたくしですが、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。


ところで、Kivaは英語版サイトしか持たないため、これまで、日本人が初めてアクセスするのには若干のハードルがあったのですが、最近、日本からもKivaをサポートしたい、という人たちによる自主的かつ非営利の日本語版サイトKiva Japan Project (http://kivajapan.web.fc2.com/) が生まれ、融資の仕方から、現地の活動の様子まで、Kivaに関する様々な情報が日本語でアップされるようになりました。Mattの来日時に、わたしもKiva Japan を思い描く人々による決起ディナーに参加させてもらったのですが、Kivaを日本にも、という想いのもとに集まった社会人や学生など様々なバックグラウンドを持った人たち数十人のエネルギーに、驚かされました。是非皆さんも覗いてみてください☆


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写真は、先月末、北京の公園で撮った夕焼け。公園の名前を忘れてしまいました。