sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

Relatively Peaceful

sayakot2007-05-16

ポリティカルサイエンスの教授による、フィリピンの選挙体制に関するレクチャー。
ウィットに富んだ華麗なブラックユーモアを得意とする30代半ばの彼女は、選挙当日、TVでコメンテーターもしていた。
市民活動にも熱心な、第一線の研究者。


それにしても、彼女が挙げたフィリピンの選挙制度の「特徴」は、どれをとっても絶望的。それにも関わらず、彼女はこの国の政治の腐敗ぶりを、むしろチャカすかのようにいくつもの例を挙げて説明するのである。


選挙委員会「COMELEC(Commission on Elections )」の政府との癒着疑惑、貧困層につけこんだ候補者による有権票買収、政府による100万件に近い選挙権の剥奪、候補者や支持者間の隠れた暴力、過熱化するPR戦略に注がれる出所不明な膨大な政治資金・・・。
(平均月収が6,000ペソ(約15,000円)のこの国で、一人の候補者が1.5億ペソ(約4億円)をTVのCMにつぎ込むこの不自然さときたら!)


インドネシア人のクラスメートが、遠慮がちに手を挙げた。そして、私達の誰もが思っていた憤りを、口にした。
"Well, I found most that the Filipinos are more tolerant than any other countries' people. Why there is NO public outrage at all here?(フィリピンの人々は、他のどの国の人たちよりも辛抱強い人たちみたいですね。どうしてこの国には、人々の怒りがもっと顕わにならないのでしょう?)"


肩をすくめながら、教授が答える。


"Probably, we became more used to the "relatively peaceful"current situation. Since it is "relatively peaceful", we need to move on(たぶん、私達は「比較的平和」な今の状況に慣れてしまったのかもしれない。[完全な平和ではないにせよ]「比較的平和」だから、[立ち止まらずに]前に進むしかないの)"


選挙に関する暴力が、120人を死に至らしめていても、この国では「比較的平和」な状態なのだ。日本だったら一人でも死ねば、大問題だというと、彼女はびっくりした様子だった。(ちなにみバングラデッシュやスリランカでも、選挙に暴力はつきものだということ。)


そして、彼女は続けた。


"But,I am stil hoping that someday people will express the "People's Power" as we did in 1986, especially among the middle class(でも、私は願っています。いつか人々が1986年に私達が示した「ピープルズ・パワー」を)示すことを。特に中流階級の間から)"


「1986年」は、独裁者マルコス大統領を、まさに国民が「ピープル」の力で、国外追放した象徴的な年。


当時の中流階級が、どのようなダイナミクスで団結をしていったのか、まだ勉強不足のため何とも言えないが、少なくとも私が肌で感じる限りにおいては、彼らが今後、一つの「ピープル」として現状に問題意識を持ち、体制を変えるために団結することなど到底想像がつかない。


"relatively peaceful"――積み重なっていく重たい現実に、人々を盲目にさせる危険な認識ではないのか。



■■おまけ
マニラ北西部パンパンガ州知事選における、候補者3名のプロフィール

○候補者A:違法ギャンブルで大儲けしているビジネスマン
○候補者B:俳優
○候補者C: 司祭

さあ、誰が勝つんでしょうか。
選挙結果が出次第、ご報告いたします。