sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

Xe Om (セ・オム)のこと。

sayakot2008-06-25

Xe Om(セ・オムと発音)というのは、ベトナムの「バイクタクシー」のこと。
一度でもベトナムを訪ねたことのある方であれば、すぐピンと来ると思うが、これはこの国ではごく一般的な乗り物で、普通のバイクの後部座席に、客を乗せて走るというもの。バイクタクシーにはライセンスも必要なく、メーターも当然ついていないため、客は事前に、行き先を告げ、値段を交渉する。通りを数メートル歩くたびに、走行中の普通のおじさんが、乗らないかい、と声をかけてくるので、最初はその度にぎょっとしていたが、今ではすっかり慣れた。


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)でインターンをすることが決まってから、まっさきに浮上したのが、交通手段の問題。フィリピンにいる時点ですでに契約が決まっていた自宅からは、とてもではないが、徒歩で通える距離ではなかったし、東京のように便利な地下鉄は当然ない。バスは入り組んでいてとても複雑で、私だって使いこなせないわよとベトナム人の友人Aに脅され、結局落ち着いたのが、このバイクタクシーのセ・オムだった。バイク通勤はちょっとこわいなと、内心思いながら、信頼できる人を探してあげるから、というAの言葉を信じ、彼女にすべてアレンジしてもらった。


そんなわけで、今は毎朝8時、自宅前の通りに、チンさんというおじさんがバイクでお迎えにやってくる。サヤコ〜と言いながら笑顔で登場し、わたしに自分の被っていたヘルメットを渡し、自分はもう一つのおんぼろヘルメットにつけ換える。英語はまったく通じないが、注意深く走る彼のバイクは、毎回必ず、15分ぴったりでSCJに到着する。帰りはまた電話するから、とわたしは携帯電話をかけるジェスチャーをしてみせ、そして片道料金の2万ドン(1ドル強)を渡す。


毎日往復3ドル弱という交通費は、わたしの限られた生活費の中ではそれなりのウェートを占めるものであるし、普通のベトナム人の感覚であれば尚更に決して安いものではないので、ベトナム人の同僚たちには、しきりにバス通勤を勧められる。乗り換えが1回だけ必要だけれど、バスなら片道で3000ドン(20セント弱)よ、と。そのときは、たしかにバス通勤も悪くないなと一瞬思ったが、
帰り、同僚にチンさんに電話してもらって、また15分きっかり後に、サヤコ〜と、笑顔でSCJの前に迎えにきてくれる彼の顔を見たら、やっぱり当分はセ・オムにお世話になろうと心が固まった。


セ・オムは病みつきになるものらしい。なにせ運転はチンさんにお任せして、自分はただ、ぼーっと、風を浴びながら、通りの風景を眺めていればいいのだ。肉や野菜や果物を売るマーケットや、通りに小さなプラスチックのイスを並べただけの簡易食堂、湖を臨む大きな公園など、どこに目をやっても、人々が溢れている。この毎日の15分間は、ほんの6日前、初めてこの国にやってきたばかりの自分が、そして言葉も習慣も何も分からない自分が、ハノイの喧騒の一部となることができる、そんなひと時でもあるのだ。その感覚がなんだかとても不思議で、心地良い。


。。。
それにしても、ハノイのバイクの交通量は半端ない。朝夕の通勤ラッシュ時は、まるで何かのパレードかイベントかのように、バイクが通りを埋め尽くす。そしてその基本的なスタンスとして、誰も後ろを振り返らない。皆、前だけを向いて、走る、走る。巨大なハシゴを運びながら走るおじさんのバイクのすぐ後ろは、小さな子どもを挟んだ一家3人乗り。大きなおなかをした妊娠中の奥さんや、エレガントなワンピースを着て、後部座席に横向きで足を組んで座る、若い女性も続く。後部座席の取っ手にひしと掴まっているのは、わたしくらいのもので、皆、不思議なくらい涼しい顔をしている。


とはいえ、近年、バイクによる事故は急増の一途をたどっているらしく、今ではドライバーや後部座席の乗客、すべてにヘルメットの着用が義務化されている。実はつい先ほど、買い物に出かけようとしたら、偶然、大家さんの義理の息子さんに遭遇し、近所のスーパーまで乗せていってくれるということになった。近場だからと、彼も意識が回らなかったのだろう。2人してノー・ヘルで出かけたら、5分後には交通警察に見つかってしまった。やっぱりね、とわたしは内心思いつつ、彼だけどこかへ連れていかれしまい、わたしは一人、タクシーで、さっき出たばかりの自宅に戻ることに。もっとも、彼もわたしの帰宅5分後には、先ほどのバイクで、申し訳なさそうに戻ってききたけれど。たぶん罰金か何かを払うだけで済んだのだろう。
。。。ハイ、お母さん、もう、2度としません。ごめんなさい。


皆さんもベトナムにいらっしゃる機会があれば、Xe Omを是非お試しください。
最近は悪質なドライバーが多いとのことなので、笑顔の素敵なチンさんをご紹介いたします☆


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写真は、通常のXe Om乗り場。