sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

初☆美容院 in the Philippines

sayakot2008-03-30

美容院へ行ってきました。


髪を切るのは、フィリピンでは初めて。
というより、海外で美容院に行くこと自体、高校時代に留学していたとき、親戚のおばさんにサンフランシスコのヴィダル・サスーンへ連れていかれて以来。そこで、パンクなデブラと言う名前の女の美容師に、“The ASIA” というタイトルでも付きそうな直線カットを施されたのがトラウマになって、美容院だけは絶対に日本で、そう心に決めていたのだが――。


先日、悪戦苦闘の末、『小型武器の規制と人間の安全保障』の授業の最終課題を提出し、ほっとした途端、無性にスッキリ気分転換したい衝動に駆られた。
そして、ついにトラウマを克服すべく,本格的に動き出すことに決めたのだった。


そして早速、「日本人、マニラ、美容院」とか「おススメ、マニラ、ヘアサロン」といったキーワードで、マニラ内に存在する、信頼のできそうな美容院をリサーチしてみたのだが、近場となると、なかなか「これ!」といったものが見つからない。マカティのビジネス街まで出向くのは億劫であるし、高級ホテル附属のヘアサロンはあまりにファンシーだ。


1時間近くネットで検索し、結局、サロン・デ・マニラ(Salon De Manila) という、フィリピンではそこそこに高級と思われる、フランチャイズ・サロンの支店に、勇気を出して予約してみることに。そして、“シニア・ドレッサー”という、その支店では最高ランクの、ゲリーという名前の美容師を指名。カット料金は、750P(約2250円)。近所の美容室は150P(約225円)であるし、日々、150Pを使うか使わないかの生活をしているわたしには結構な大金だが、フィリピン「初」のヘアカット体験、ということで、今回は目をつむることに。


わたし:「今日、ゲリーに髪を切ってもらいたいのですけど、何時から大丈夫ですか」
スタッフ:「店が開くのは11時ですが」
(トップスタイリストの割には、ずいぶん簡単に予約が取れるんだなあ・・・)
わたし:「じゃあ11時の予約でいいですか」
スタッフ:「開店は11時からですが、スタッフは大体いつも11時半頃に到着するので、その頃に来ることをおススメします」
わたし:「・・・・??わかりました。じゃあ11時半に行きますね」
スタッフ:「はい。お待ちしています」


そして、家を出る直前。
サロンから、携帯に、電話が入る。
スタッフ:「申し訳ありません。ゲリーの到着が12時頃になりそうなので、予約を12時に変えてもらえませんか」
わたし:「大丈夫ですよ。じゃあ12時にお願いします」
(ずいぶん態度の大きそうな美容師さんだなあ・・・。でも、わざわざ連絡をくれるところは、さすが一流フランチャイズ。)


そして12時。
勇気を出して、店内へ。
サロン内の雰囲気は、日本の美容院のそれと似ていて、少しほっとする。
スタッフも、若い爽やかな女性たちが中心で、黒のTシャツとパンツスタイルがなかなかお洒落だ。


ゲリーはどれだろう、とキョロキョロしていると、「ゲリーがまだ来ていないので、先にシャンプーしますね」、と言ってシャンプー台に通される。日本にも見かけるシャンプー台と同じだが、水は冷たい。ほとんど冷水のようなぬるま湯で、じゃぶじゃぶとシャンプーが始まる。水がびちゃびちゃと肩までかかるのもお構いなし。シャンプー後、髪の水気をろくに絞らずタオルを巻いてしまうものだから、ほとんど流れるように、髪から水が、したたり落ちる。背中はずぶ濡れで、床は水浸し。
それでもスタッフは、にっこりと微笑んで、次の座席へ誘導をする。


そして、髪がずぶ濡れのまま、待たされること、1時間半――(おかげで髪は乾いたけれど)。
遅い、遅すぎる。


あまりにもヒマなので、自分で歩いて、棚から数年前のVOGUEを何冊かとってくる。喉も渇いた。
「イライラしたってゲリーはいないのだから、仕方ナイ。ガマン。ガマン。」と、自分に言い聞かせるが、それにしたって、彼が一体いつになったらやってくるのか、笑顔の素敵なスタッフもそれくらい教えてくれても良いのでは? と、次第にイライラが募ってくる。これが、1カット150Pの近所のサロンの出来事ならば、まあよくあることだと思えるはずなのだが――(だってここはフィリピンなのだから)、曲がりなりにもここは、750Pもの大金をチャージする、「上流」店。ほんのもう少し、努力してくれても良いのではと、ネチネチと思いながら、ああ、せっかく気分をスッキリさせるためにやってきたのに、わたしってば人間が小さいなぁ・・・、と一人で葛藤。
そこで更に30分が経過。


そしてついに、思い切って聞いてみる。
わたし:「(スタッフに対し、)ゲリーはいつもこんなにお客を待たせるんですか」
スタッフ:「(困ったように)いつもというわけでは・・・」


ああ、これでは完全にいじわるばあさんだと思いながら、アカラサマにため息をついてしまう自分を、もう止めることができない。


そして待たされること、更に30分。
店に到着してから、もう2時間半近く経過した。
途中でよっぽど帰ってしまおうかと思ったが、一度、ゲリーの顔を見てやらないと気が済まない――きっと、お客にもスタッフにも、
カリスマとか何とかもてはやされて、イイ気になっている傲慢な男に違いない――。と、勝手にゲリーのギラギラとした顔を空想し、
気分を紛らわせる。


そして、ついに、ゲリー到着。
「こんなに待たせるなんて、よっぽど腕がいいんでしょうね!」
そんなイヤミな台詞を言うにはどのタイミングが良いだろうか、そんな想像をしながら、彼の方を見た。



・・・。
小太りで、可愛らしいヘアバンドをしたゲリーは、常連客たちに愛想を振りまいている最中だった。
皆、わたしと同じように待たされていたはずなのに、ちっとも気にする様子はない。彼(彼女)は、とても愛されているようだった。
そしてゲリーは、腰を振りながらわたしのところにやってきて、あなた初めてのお客さんね、どうぞヨロシクぅと手を差し出してきた。
そして、ワタシ、いつかTokyoに行ってみたいのよねぇ、なんて言いながら、彼(彼女)はおもむろにバサリバサリとわたしの髪にハサミを入れ始めた――。
20分後、鏡の前には、ちびまる子ちゃんが一人、座っていた。


「Oh my Goooood, it's Soooooo Cuuuuuute!!!」
自分の仕事にご満悦の彼(彼女)は、
「また来てネ。もっと髪が伸びたら、今度はフワフワパーマにしましょうネ♪バーイ☆」
と言って、次のお客さんのところに、腰を振りながら去っていった。


。。。
お見事。本当にタクマシイ・・・・。
英国の某シンクタンクが発表した、世界の国民の「幸福度(Happy Planet Index)」調査によると、フィリピン人の「幸福度」は、世界178カ国中、17位。国家として抱える数々の深刻な問題にも関わらず、多くの先進国のそれをはるかに凌ぐ高順位に、堂々のランクイン。かたや日本は、95位。(http://www.happyplanetindex.org/


この調査結果、何だかすごく分かる気がする・・・。
ぱっつんぱっつんの前髪を、眺めながら、そんなことを思った。


もう二度と行かない、何度もそう思ったはずなのに、あの不思議な空気感を解明しに、もう1回行ってみてもいいかもしれない――、
実は既にそう思い始めていたり。だが今度は予約の時間を、もっと遅くして行こう。


◆◆◆
写真は、バタッド村の棚田の子供たち。