sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

ラリベラ巡礼

sayakot2011-09-29

エチオピアに赴任してからはや1年3ヶ月。仕事の関係でこれまで国内東西南北の農村や地方都市に足を運ぶことはあったものの、旅行らしい旅行の機会はなかなかなかったのですが、今回ようやく、以前から気になっていたエチオピア正教有数の聖地「ラリベラ(Lalibella)」に出かけることができました♪


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アジスからラリベラへは小さな飛行機で約2時間。朝7時半発の便に乗るために、起床時間は朝5:30。眠たい目をこすりつつ飛行機から地上を見下ろすと、青々とたくましく育った大麦やメイズ、ソルガムが狭い農地にひしめき、その隣には、雨季の終わりを告げるマスカル・フラワーが黄色の可憐な花を咲かせている。空高い太陽の光が、一年で最も爽やかな季節の始まりを感じさせる。


ラリベラは1978年にユネスコ世界文化遺産にも登録されたエチオピア正教の聖地の一つで、またこの国随一ともいえる観光地。12世紀初め、イスラム勢力に支配されたために聖地エルサレムへの巡礼が困難になったことから、時の名君ラリベラ王がこの地に第二のエルサレム建設を試みたことが始まりと言われている。この地には12mを超す巨大な一枚岩を彫り抜いて造られた岩窟教会が12あり、それぞれの教会とその周辺には、ノアの箱船ヨルダン川シナイ山ゴルゴダの丘、といった新旧約聖書に馴染みのあるモチーフが多数散りばめられている。

これまでガイドブックの写真やポスターで何度も見てきた岩窟教会は、実際に目の前にするとその迫力にただただ驚かされる。何十年という年月をかけて彫りぬかれ、その後も何百年という歳月を雨風にさらされながら、人々に守られ、信仰の象徴としてそびえ続けてきた重みがそこにある。
教会を囲む壁に垂直に彫られたいくつもの穴には、つい最近まで、無数の僧侶のミイラが納められていたそうだ(1体だけ、今もむき出しで残っているのを見たが)。信仰と共に生き、その場所で天に召され、そして歳月と共に風化してゆく教会と一体となるーーそれはもしかしたら同地の人々の理想の信仰の形だったのかもしれない。

もっとも、エチオピア人以外のキリスト教徒には、アフリカ大陸の、しかも辺境の地ラリベラで、「第二のエルサレム建設」というある意味“恐れ多”すぎる壮大な計画が立てられ、実行に移されていたことなどほとんど知られていないと思うが、一刀一刀削られて生まれた教会の壁を眺めながら、当時の人々が信仰にかけた執念を感じた気がした。


ところで、ラリベラの主要な教会群は町の中心にあり、ホテルからも徒歩10分くらいで行くことができるのだが、1つ、アシェトンの聖マリアム教会(Ashetan St.Maryam Church)だけは3000メートルを越える山の頂にあり、わたしたちはラバ(ロバと馬の合の子)に乗り2-3時間かけて登って行った(もちろん徒歩でもOK、車はNG)。ちなみに「ラバ」は地方では比較的身近な乗り物で、一代限りで繁殖能力がない代わり、馬の力強さとロバの耐久力をもった個体となることから市場価値が高い。体高が低くおとなしい上、基本的には持ち主が終始引いてくれるので、道中はのんびりその背中に揺られていればよいのだが、何カ所か、絶壁で道が狭まる箇所では、危険なのでいったん降り、徒歩で通過する。


この日は一週間に一度のマーケットの日だったこともあり、山道では途中、マーケットで売るための穀物の大袋や薪や木材を背負った人々に何人もすれ違ったのも興味深かった。


スタート地点から約2時間半。視界が急に開けると、そこには桃源郷のような風景が広がっていた。首都では見かけたことのない、やさしい青や紫色をした花々が野に咲き乱れ、点在する小さな畑では大麦の緑の穂が風に揺れている。裸足の子どもたちや女性たちが羊を放牧している。そしてその背後には、霞がかった頂上がようやく見えてくる。ラバの主人が、先ほどの大麦畑を指し、これは俺の畑なんだと自慢そうに教えてくれた。


頂上には、目的の聖マリアム教会。やはり大きな岩を彫り貫いた岩窟教会形式で、このような地での建造作業には一体どれだけの歳月を要したのかと思いを馳せる。この教会はラリベラの町を見下ろし、天国にもっとも近い教会として今でも人々の信仰を集めている。深く霧がかった岸壁では、僧侶見習いの少年が、先輩僧侶に見守られながら教典を一生懸命読み上げていた。

教会横の小さな小屋では女性達がお供え用のパンを焼いていた。何百年とこの地で続けられてきた人々の信仰の姿が、そこにあった。


帰りがけ、子どもたちが4人駆けてきて、摘んできたばかりのお花をプレゼントしてくれた。ラバの主人の子どもたちらしい。父の帰りを待ちわびていたようだった。

ふと、バッグの底に以前から日本の祖母に持たされていた鉛筆を入れていたのを思い出す。エチオピアの子どもたちにあげてね、と預かっていたのだが、これまで仕事で訪ねてきたプロジェクトサイトでは、際限がなくなってしまうこともあってなかなか配る機会がなかったのだが、今回はお花のお礼にと、ま新しい鉛筆を数本ずつ渡してあげた。子どもたちに笑顔が広がった。ラバの主人曰く、一番年上の女の子は小学4年生なのだそうだ。いったいどこの小学校に通っているのだろうかと思ったが、標高3000mを裸足で駆け回る子どもたちの身の軽さを見るところ、町の小学校に通うために毎日山を下りているとしても不思議ではない。彼女達が大きくなる頃、この土地の風景はどのようになっているだろうか。


☆ ☆☆というわけで、2泊3日のラリベラ巡礼は、期待を超える素晴らしさで
した。ところでラリベラでは岩窟教会とラバに潜むノミ・ダニが凄い、といろんな人に聞いていた&ガイドブックにも載っていたので、全日つま先からおなか、お尻、背中まで強力な虫除けクリームを塗りたくって臨みましたが、結局激しくやられてしまいました。同地に旅行を計画される方はどうぞくれぐれもお気をつけ下さい。