sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

断水のはなし。

sayakot2009-10-07

ここ最近、我が家で断水がちょこちょこ起こります。
今まで経験があまりないので、実感なかったですが、まる1日水が出ないって、結構大変なこと。飲み水は外で買っているので問題ないけれど、この蒸し暑さの中で、シャワーを浴びれず、トイレも使えない生活というのは、結構ワイルドです。


我が家の水は、屋根の上の貯水タンクに毎日大家さんが庭の水道を30分間いっぱいにひねってためてくれているもの(タンクの衛生状態ってどうやって保たれているんだろうかとか、コワいことは考えず・・・)。時々、タンクご機嫌がワルいと、水が止まる。そしてそんなときに限って、大家さん(約60歳)はお隣に住むボーイフレンドとカンクンかどこかのビーチに出かけてしまったっきり、帰ってこなかったり。幸い、連続して2日以上起きたことがまだないので、例えばそれが週末であれば、まる一日ショッピングモールに避難して過ごす程度の不便さで乗り越えてます。


水が出なくて困っていた、ある日の夜。
窓から「セニョリータ!セニョリータ!」と中年女性の低い声。ちょっとコワい。。。と思いながら、恐る恐る外に出てみたら、同じ敷地に住むお隣さん。この2カ月半、会話したことはおろか、時々壁越しの物音に気配を感じるくらいで、ほとんど接点がなかった彼女と、ついに対面。
どうやら、「水がでないわよねえ。困ったわねえ。大家さんはいないし・・・」というフラストレーションを、わざわざ共有しに来てくれたらしい。


これまで、お互いの気配を感じながらも、一度もまともに顔を合わせたことがなかったせいで、彼女は始めの方こそもじもじしていたが、見慣れぬ隣人に好奇心が隠せない様子。結局、「マリ」はわたしの部屋で2時間近く話し込んでいった。


彼女はベリーズ出身で現在36歳。喋ると、前歯と奥歯に並んだ金歯がギラッと光る。ベリーズ人なので英語が母国語のはずなのに、なぜかスペイン語くらい通じない(ような気がする)。3年前、たまたま仕事でやってきた今のメキシコ人の旦那さんと恋に落ち、結婚してチェトゥマルにやってきたのだそうだ。今は、夫婦でベリーズのフリーゾーン(関税免除エリア。中国製の安い衣類や家電を売る店がひしめくように並んでいる)に夫婦で通う形で、小さな洋服屋を営みながらなんとか生計を立てているらしい。


それにしても、このアジア人娘が、一体どうして一人で家の家賃を払うことができるのか、どうしてデジタルカメラやパソコンを買うお金があるのか、彼女は不思議で仕方ないらしく、部屋のあらゆる私物を指さしては、あれはいくらしたのか、どこで買ったのか、そもそもあんたの給料はいくらなのよと詮索する。できるだけぼかして伝えるけれども、気を遣う。あまり居心地のいいものではないけれど、彼女の日々の生活にとって、経済的な要素がいかに大きな問題であるかということは明らかで、だからこそ、わたしの存在が彼女の好奇心を純粋に捉えたのだということもわかる。


そして、矢継ぎ早の質問が止まったかと思うと、今度は、洗面所の体重計を見つけ、「使ってもいい?!」と大喜びで飛び乗る。数字を読んで、というから読みあげると、「大変!」と、ずいぶん太っちゃった、というような仕草をして大笑い。無邪気で何の飾り気もない彼女に、ふと、ベリーズ人でありながらメキシコで生きることを選んだ彼女は、ある意味わたし以上に孤独なのかもしれない、と思ったりする。


そういえばあんた、共有キッチンもほとんど使ってないでしょう、夜ごはんはどうしてるの、と聞かれ、なんでもお見通しだなとちょっと可笑しく思いながら、うーん、簡単にレンジで作ったり、あとはもう食べないことが多いかなと答えると、彼女はびっくりした様子で、即座に「お腹すいてる??私の夕食の残り、食べる??」と言って、姿を消した。そして、5分後、プラスチック皿にイワシの卵とじとトルティーヤを3枚載せて、持ってきてくれた。マリは皿を手渡すと、もう疲れてるでしょ、ジュースをありがとう、と言って、ずいぶんあっさり帰っていった。メキシコに来てから、このトルティーヤには実はもうずいぶんうんざりしていたのだけれど、この日のトルティーヤは、なんだか無性に美味しく感じられた。


そしてこのあいだ。仕事に少し疲れて帰ってきたら、「アミ〜ガ〜(女ともだち)」と、ノックの音。うーん、今日はおしゃべりはきついなーと思いながら、ドアを開けると、やはり外にはマリ。「ほら、あんたお腹すいてるでしょ」といってわたしに何やら包みをもたせ、「おやすみ、アミーガ」と言って、彼女は自分の家に戻っていった。


袋の中には、砂糖でがちがちに固まった菓子パンが1つ。ありがたくかじりながら、今度はわたしが手土産を持って遊びに行く番だなと思う。何がいいかな。


あ、ちなみに、我が家には食べモノがないわけではなくて、作るのをちょっと面倒くさがっているだけなのですけれどね。


断水を機に生まれたチェトゥマル村の、わたしたちの友情の行方。はてさて、どうなることやら。



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写真は、マヤ終焉の地(の一つ?)と言われるトゥルム遺跡
崖下にはカリブ海が広がってます。チェトゥマル村からバスで2時間♪