sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

アフガニスタンのムハマドさんの畑の行方。

sayakot2008-01-23

これはスゴイ。
何がスゴイかというと、Kiva.org のこと。


今日、例の『ソーシャル・アントレプレナーシップ』の授業で取り上げられた、
彼らのホームページを何気なく覗いて、気付いたら画面に釘ヅケになり、
その5分後には会員登録していた。


Kivaは2005年、マットとジェシカ という、スタンフォード大学出身の、当時
まだ20代の夫婦がシリコンバレーで立ち上げた。インターネット上のプラット
フォームを通じて、途上国の起業家たちに対する、個人の小口融資を可能に
した、非営利団体だ。まだ若い組織だが、今やGoogle、ヤフー、マイクロソフトYou Tubeスターバックスなどのビッグネームが全面協力し、現在、もっとも「旬」な、社会起業家たちと言っていい。


●インターネット。
マイクロファイナンス
●ローン。
●しかも途上国・・・。


なんだかとても難しそうで、しかもウサンクサイ。


実際、わたしもこの間まで、そう思っていたし、そもそも、Kivaのことを聞くのは、今回が初めてではなかったのだ。


「“Kiva”っていう面白い組織があってさ。しかも俺の同級生が立ち上げた組織なんだ。お前の好きな分野なんじゃないか―?」


と、この間の一時帰国で、同じくスタンフォード大学から戻ってきていた友人とランチをした時、そんなことを教えてもらっていたのだ。だがその時は、忙しいとか難しそうとか、何やかんや情けない言い訳をして、その後まったくフォローアップしていなかった。


だからそんなわたしが言うのも恐縮なのだが、ちょっと聞いてほしい。
ローンは、$25から貸付けることができる上、Kivaのサポートするプロジェクトの回収率は99.7%。通常のマイクロクレジット団体の97%という数字より、さらに高いのだ。「貸した」お金は、通常、プロジェクトの成果が実る半年後から1年後に、そのまま自分の手元に戻ってくる。


要は、例えば、週末予定していた映画とディナーをちょっと我慢して、Kivaに「貸した」3000円が、この20年間、日々の食糧にさえ困窮していたエチオピアの土地無し農民が、その運命を劇的に変えるのを、お手伝いできるかもしれない、ということだ。そして何度も言うけれど、貸したお金は、やがてそのまま手元に戻ってくる。だから、もしどうしても、前回諦めた映画が気になるというのなら、そのお金で改めて映画に行ってもいいし、いっそ、また別の新たなプロジェクトに貸し付けてもいい。


そんな話が、本当にあるだろうか。仕組みはこうだ。
Kivaのこのプラットフォームを通じて、世界中の個人から寄せられたお金は、Kivaが提携する、“Field Partners”と呼ばれる各地のマイクロファイナンス団体に100%渡る。そしてその現地団体が、事前に審査した個人にその資金を渡し、彼らはそれを元手に、小さな事業を始めたり、現状を改善するための、設備投資などに充てる。
例えば、お母さんが服を作って町で売るためのミシンとか、得意の手料理を売るための屋台とか、チーズを作るためのヤギとか―。そんなものを買うために、使われるのである。


プロジェクトは、その内容も規模も、地域や個人の状況によって様々だ。ローンは半年から1年で返済され、利子は約20%。ただしこれは、借りた個人から、現地のマイクロファイナンス団体に対して返済されるもので、Kivaに利子分が渡ることはない。だからローンを提供者した個人も、貸した額が「そっくりそのまま」戻ってくるだけなのだ。Kiva自体は、現在、企業や個人の寄付のみで成り立っている、完全な非営利団体だ。


ダマされたと思って、試しに、Kivaのホームページを覗いてみてほしい。


http://www.kiva.org/app.php


トップページに現れるのは、世界各地で融資を待つ人々の写真と、プロフィール、必要としている額と、その用途。そして、現時点で何%まで集まっているのかが、瞬時に分かるようになっている。この臨場感が、まずスゴイ。しかも、ローンを待つ個人だけでなく、彼らに実際にローンを提供した側のプロフィール(任意)やメッセージもすぐに見ることができ、どんな人物が、どんな想いでこの融資を決めたのか、簡単に知ることができる。Kivaという一つの舞台で、世界の学生やサラリーマンや主婦や大工や教師や農民が、
文字通り、一つの想いの下に、相互につながっているというこのスケール感は、スゴイとしか言いようがない。


今回、沢山のリストの中で、わたしがささやかなローン提供($25)を決めたのは、アフガニスタンのカブールに住む、ムハマド・ヤシン・グルさんというおじさんだ。ひげもじゃで、少し気難しそうな上、必要な額が他の候補者と比べて少し大きめのせいか、ローンの集まり具合があまりよくなさそうだったのが、わたしの選択の決め手となった。プロフィールを見ると、彼は4人の子持ちで、10年間の農業経験があるということが書かれている。今回、子供たちにより良い教育を受けさせるために、農地の生産を向上させるべく、肥料や種を購入する資金が必要だとのこと。$1,025という必要額に対し、現時点で$325が寄せられている。今の所、ムハマドさんにローンを提供しているのは、わたしの他に、ガーデニングが趣味のNethanというオーストラリア人と、Novatoという引退したアメリカ人科学者など、他15名。もちろん匿名も可能だし、プロフィールに自ら記載しさえしなければ、個人情報が公開されることはない。


貸し手(Lender)になるプロセスは、いたって簡単。まず、気になるプロジェクトをクリックすると、「$25貸す(Lend $25)」というアイコンが右側に出てくる。それをクリックすると、自動的に登録フォームに誘導され、そこでregisterするところから始まる。必要な情報は氏名、メールアドレス、住所、電話番号、クレジットカード番号、パスワードなど。またこの際、任意で、ローンの10%の額を、Kivaの運営費に寄付するというオプションも選択できる。つまり仮に$25の貸付を選択した場合、プラス10%の$2.5で、計$27.5が引き落とされることになる。一度登録すると、自分のポートフォリオ・ページが作成され、現在そして過去に、自分が、誰に・幾らローン提供したか、今、どれ位の額が集まっているのか、他に誰がプロジェクトをサポートしているのか、更にプロジェクトが開始した場合、その進捗状況まで、いつでも確認することができる。


ところで、「マイクロクレジット」という言葉を一躍有名にした、バングラデッシュのグラミン銀行とのアプローチの違いで言うと、グラミン銀行が、「借り手」と「貸し手としての銀行」という関係が基本の構図であるのに対し、Kivaの「貸し手」は、基本的には、わたしたちのような個人。どちらがより優れているという訳ではもちろんないけれど、ともすれば「関係性」を見失いがちな先進国に生きる一市民が、世界とのつながりを、ある意味でこれほど生々しく感じながら(手法はとてもバーチャルだけど)国際貢献できるという意味では、Kivaの果たしている役割は、とてつもなく大きいように思う。まさに、「顔の見える援助」の究極的な形ではないだろうか。


・・・。
とか何とかかんとか言っているうちに、気付いたら、アフガニスタンのムハマドさんへのローン提供額が$700を越えていました。
これはたぶん、明日になったら達成してそうな勢いですね。Kiva、恐るべし。。。


もちろん一方で、こういった「ワン・クリック」の気軽な「援助」に対する批判的な見方はあるかもしれない。だが、それの何がワルイのかと思うのだ。スクリーンの向こうで確かにつながっている、ある人の生活を、そして、現状を脱したいと心から願い、『ローン』という大きな賭けに出た、彼らのチャレンジを、自分のちょっとした意識と行動で、確かにサポートできるというのなら。
というよりそもそも、「貸した」お金は、ちゃんと「返して」もらうのだから、「援助」なんて大げさなものですらなくて、「ご近所さん」への、ちょっとした「お手伝い」だと思うのです。どうでしょうか。


ちなみに“Kiva”とは、スワヒリ語で「Unity」を意味するとのこと。