sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

Social Entrepreneur -社会起業家とは-

sayakot2008-01-21

“Entrepreneurship in the Social Sector: Making it Happen”


現在、履修している授業のタイトルだ。


ぴったりとくる訳が見つからないが、『社会分野におけるアントレプレナーシップ: 〜「それ」を実現させるには〜』という感じが近いだろうか。一見、「それ」が何を
指すかはちょっと曖昧で、大学院のゼミのタイトルにしては、ずいぶん感情的な
感じがするかもしれない。だがこの文脈においては、貧困とか、社会格差とか、
環境問題とか、一見解決が不可能に思える世の中のモロモロの根深い問題に、意思ある革新的なビジネスのアプローチを通じて立ち向かっていこうじゃないかという、講師の意気込みが感じ取れる。


授業の内容は、そもそも「社会起業家精神とは何か」というところから始まり、非営利組織やCSRの革新的事例と失敗例、NGO
企業の戦略的パートナーシップ、ビジネスプランの作り方、効果のアセスメント方法、組織拡大の戦略や、リーダーシップ論等々、
多岐に渡る。教室の空気も心なしか、アントレプレナー養成講座的な雰囲気があって、面白い。日々みっちりのリーディングに加え、2回のプレゼンテーションと、最終課題である20ページのビジネス計画書は、おそらく今までのコースの中で、一番「重たい」もの
だが、同時に一番プラクティカルで、「手ごたえ」のある授業だと言ってもいい。今回の選択式ゼミの中でも1番早く定員オーバーになった、人気No.1コースだ。


講師のモヒートは、まだ30代半ば。両親の仕事の関係で、幼い頃から世界10カ国を転々としたという彼は、母国インドから日本、アメリカ、スイスまで、ある意味「両極端」の世界を肌で感じながら育った。スタンフォード大学工学部卒業後、戦略系コンサルティングファームで3年間の経験を積んだ後、エクアドルの公立高校で教師に転身。その後、教育学でハーバード大学院を修了後、『地球憲章(Earth Charter)』本部で、「持続可能な開発」に関する環境教育プログラム開発に従事。2004年から、国連平和大学で、現在のコースを教えている。


「企業が発展すること」と「社会をより良くすること」という、時に相反する2つの事象をいかに両立させるか、そしてそのコラボレーションを、いかにより前向きな原動力へと変換していくか、それが彼の問題意識だ。そのスピード感、溢れるエネルギー、そしてグループ・ダイナミクスをモットーに、常に教室の全員を巻き込もうとする、教育者としての姿勢は、大学のスタッフ陣の中でも、群を抜いているように思う。彼のような人間が、このフィールドにいることは、とても心強い。


さて。授業の内容に戻りたい。
よく勘違いされるのだが、「ソーシャル・アントレプレナーシップ」の領域は、決して、狭義の意味でのCSRというレベルに留まらない。非営利のNGOでも、革新的な収益事業等を行っている団体などは「ソーシャル・アントレプレナー」と言えるだろうし、また例えば、
マイクロクレジット貧困層を対象にした低金利の無担保融資)で、2006年ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行ムハマド・ユヌス氏や、日本でも最近話題のマザーハウス(途上国発のトップ・ブランドを目指し、バングラデシュフェアトレード・ハンドバッグや
雑貨を生産)の山口絵里子さんなどは、典型的な若手のソーシャル・アントレプレナーの代表と言えるだろう。


ちなみにこうした、社会的使命に基づく営利企業のことを、この授業では “Social Purpose Commercial Ventures”と呼び、いわゆる「一般」の企業とは区別する。とはいえ、そんなことを言うと、マイクロソフトだって、トヨタだって、世の中の大抵の企業はそれぞれに社会的使命を背負ってそれを追求しているのだ、と言われてしまうかもしれない。この声に対しては、本当にその通りだと思うし、
前職のコンサル時代、実際に、クライアントの、会社や仕事に対する熱い使命感や誇りを肌で感じてきた人間としては、「企業」=「利益追求」=「社会的使命感が無い」という安易な括りには違和感がある。


そういう意味で、何が社会起業家を「ソーシャル・アントレプレナー」たらしめるかについては、自分の中でもいまだ明確になりきっていない部分があるけれど、今現在の理解では、それまでNGOや政府が携わってきた、社会的問題が介在する領域において、「利益の最大化」よりも、「社会的インパクト」の最大化を目的に事業を行っていること、が違いなのではと思う。もっとも、「社会的インパクト」はしばしば質的で、数量化するのは難しいし、一方で「利益」は社会の「共感」量を反映する格好の指標かもしれないが、周縁化された領域においては、言及されるべき社会的インパクトが、常に利益に反映されるとは限らないのだ。


結局、ソーシャル・エントレプレナーってどんな人たちなんでしょう?
皆さんのご意見、お待ちしております。


今週は(バテ気味ですが)出来るだけ授業の内容をアップしていきます〜。


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丘の上のレストランからの風景。
虫の声が響いて、のんびり夕日を見るのに絶好のスポットです。