sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

A Story behind a fire

sayakot2007-07-26

先月の6月12日、マニラの郵便局で火災が発生。一部倉庫が燃え、100万ペソ近い被害額が出た。海外からの郵便物に消失等の被害が出た可能性があったため、日本の郵便局にも緊急告知があったらしい。(自分の荷物が混じっていたらさぞかしショックだっただろうなあ。。。)


ところで、この事件には続きがある。現場の様子を撮影していたGMAニュースが、消火活動をせずに荷物を堂々と開封している消防士たちの3人の姿をキャッチし、それが全国に放送されたのだ。


一部の消防士たちによる火災現場での窃盗行為は、もはやこの国では「常識」なのだそうだが、その一部始終が初めて放映されたのだから、当然、事件はすぐにスキャンダルを呼んだ。


顔が全面に出てしまった当事者の消防士は、後日、「カメラのクルーに指示をされただけ」と反論した。
また、消防局(Bureau of Fire Protection) のスポークスマンは、「事実関係は調査中である」とコメントした上で、疑惑をかけられている残りの2名のメンバーについて、消防局(BFP)に所属する正規の「消防士」ではなく、現場にいた「消防ボランティア」ではないかと言葉を濁した。
だが、顔ははっきりと映っていなかったにせよ、この2名がBFPの消防ジャケットを着用していた様子は既にカメラが捉えており、罪をなすりつけられた「消防ボランティア」からの激しい反発を呼んでいる。


さて、「消防ボランティア」というのは、要はそのまま、フィリピン各地で組織されている「ボランティア」の消防隊であるようだ。ボランティアといえども、独自に訓練を行い、消火装置等もBFPに劣らぬものがあるそうで、火事現場には、BFP同様、どこにでも駆けつける。(恥ずかしながら、わたしはまったく知らなかったのですが、日本でも、地元住民によって組織される地区毎の「消防団」があるそうですね)


彼らの決定的な特徴。それは、構成員が全員、フィリピンに住む中国系エスニックであること。


いわゆる「一般的」なフィリピン人と、中国系エスニックの間にある、一種の対立構造については、以前も紹介したことがある。特に、中国系エスニックからの不信感は根強く、彼らの中には、火事が起きても、同胞である消防ボランティアの到着を見届けるまでは、絶対に現場を離れない者が多くいるそうだ。中には避難が遅れ、命を落としかけたケースもあるとのこと。要は、「貧しいフィリピン人消防士が現場で何をしでかすか分からないから」、というわけである。誇り高く、統制された消防ボランティアに対する信頼は、一般フィリピン人の間でも高いとのこと。


あくまで推測だが、この起源はきっと、中国系エスニックによる、中国系エスニックのための自衛組織だったのだろう。
そして、中国系エスニックの「フィリピン化」、あるいは「和解」が少しずつ進む中で、この地に生まれ育った彼らなりのフィリピン社会に対する責任感と、中国系としてのプライドとが、入り混じった形で発現したのが現在の姿なのかもしれない。


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写真は、ビコールにあるお洒落レストランの事務所。のんびりした外観と対照的に、中は近代的な普通のオフィス。