sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

Fair Trade その2

sayakot2007-07-08

フェアトレードに関する代表的な国際機関に、「FLO」と「IFAT」、2つの独立した組織がある。これらの組織が、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ地域の農民や労働者を擁する生産者団体を審査し、フェアトレード資格の認証を行っている。
FLOは主に「商品」の、IFATは商品を生産、あるいは取り扱う「団体」を認定する。


とはいえ、現在日本で消費者向けに展開されているフェアトレード商品のすべてが、これら機関のいずれかの認証を受けたものなのかというと、そうではない。ラベルがなくとも「フェアトレード」と名乗って商品を販売することはできるし、それらは必ずしもニセモノという訳ではない。こういった商品は、先ほど紹介した国際組織には属さない、比較的小さな団体を経由したものであることが多い。


認証ラベルを持つことで、商品の信頼性は当然高まる。だがその手続きには、時に膨大な時間と金銭的コストが要される。実際、日本でIFATの難関をクリアした団体は、わずか2団体に過ぎないとのこと。


今年5月、ベルギーでIFATの国際会議が開催された。2年に一度、世界中から、IFAT会員を中心とした生産者団体や支援団体が集結し、情報交換や新たなネットワーク作りを行うのである。これらの動きが、フェアトレードの世界的な基盤作りに大きく貢献していることは間違いない。


じつは、先日お話を伺ったフェアトレード団体CCAP代表のマリアさんも、IFATラベルの獲得に向けて、この会議の参加に意気込んでいたそうだ。CCAPの事業やプロジェクト紹介、そして新規バイヤー獲得に向けた、製品に関するプレゼン準備も万全に行っていたのだが、結局、最後の最後になっても、ベルギー入国のビザを得ることが出来ず、勝負のステージに立つことさえ、叶わなかった。


「それはもう、本当にがっかりしたわ!!!」


唇をかみしめるように彼女は言う。


そう。
短期の滞在であれば、ビザが無くとも大抵の国に入国できてしまうわたし達は、日頃、“Japanese Passport”の威力を意識することは殆どない。だが、フィリピンやインドネシア、中国etc...途上国に住む多くの人々には、先進国に「ただ足を踏み入れる」ということにさえ、とてつもないハードルが立ちはだかっているのである。例えそれが、彼女のようなキャリアと使命を持った女性であっても。30近くあるフィリピンのフェアトレード団体の中で、会議への参加を果たすことができたのは、わずか2,3だったという。


だが、彼女たちは決して立ち止まらない。
CCAPは最近、一つの冊子を作成した。生産者団体の組織開発トレーニングや、コミュニティ内部の企業家育成、アドボカシー提言など、35年に及ぶ彼ら独自の経験やノウハウを、体系だったマニュアルに落とし込んだのだ。その過程には、専門コンサルタントとの度重なる議論と、慎重な編集作業があり、ついにはコピーライトも取得した。紛れもない、彼女達の努力の結晶である。そしてそれは、完成したその「成果」を土台に、他のフェアトレード団体をターゲットとしたトレーニング・プログラムを作り、それをCCAPの新規事業として育てていこうという、彼女達の新たな挑戦の始まりでもある。


フェアトレード団体同士のエンパワーメントを通じて、この領域の影響力が大きくなれば、それだけ政府や社会に対する発言力も強くなるでしょう。
その言葉には揺らぎがない。



話はそれるが、マリアさんたちCCAPのメンバーは、12月になると、とにかく忙しいらしい。
年末の決算期というのはもちろんだが、もう一つの理由は、パートナーシップを組む生産者団体へのちょっとした「労い」を、クリスマスを迎えるこの時期に合わせているからだ。


毎年12月になると、マリアさんたちCCAPのスタッフは、各地に散らばっている生産者団体を訪ね、それぞれの成果に応じてささやかなインセンティブを渡しにいく。彼らの食卓に、ちょっとしたご馳走が並べられるように。愛する家族に、ささやかな贈り物が渡せるように。
だから、


"It has to be before Chiristmas!! However busy we are!! (その時期は、絶対にクリスマス前じゃなくちゃダメなの!どんなに私たちが忙しくても!!)"


使命感に燃えるマリアさんの表情が、ふと和らいだ瞬間だった。


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写真は、CCAPの倉庫。
世界各地への輸出を待つクラフト商品で、天井高くまで溢れていた。日本行きの荷物も発見。