sayakotの日記

コスタリカ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、エチオピアで、勉強したり旅したり働いたりしていた当時20-30代女子のブログ。

花形産業

sayakot2007-06-28

私が通っている、Ateneoの卒業生である友人。
先月からセブ航空のパイロット養成学校に通っている。


この間、Ateneo卒業直後は何をやっていたのかと聞くと、


“A Call Center”


との答えが返ってきた。


コールセンター?
彼は就職活動に失敗してしまったのだろうか、思わず勝手な疑念が起こる(失礼)。


日本では、大学生や主婦の手ごろなバイトというイメージの強いコールセンター。
消費者の素朴な疑問や理不尽なクレームに対し、機械的なマニュアルに沿って、さも自分がその企業の一社員であるかのように応対するブースの風景は、この国では泣く子も黙る名門大学を卒業した彼には、少し不似合いに思えたのだが。


・・・。
実はコールセンタービジネスは、近年、この国で一大産業に成長しつつある領域。アメリカを中心とした多くの外資系企業が、顧客サービスのアウトソース先としてフィリピンに注目をしているのである。


かつて多くの米国系企業が、その役割をインドに求め、各地に拠点を進出させて話題になっていたが、その障害として容易に想像できるのは、彼らのややぶっきらぼうにも聞こえる独特のイントネーションと、強烈な訛りである。


一方、ここフィリピンには、安価な労働力と高度な英語力に加え、かつての宗主国アメリカに対する文化的な親和性と、西欧的なサービスマインドを備えた労働力(インドと何が違うのかと問い詰められると困ってしまうのだが、人々の対応を見れば明らか)が溢れている。


そして、かつては数えるほどしか存在しなった6年前に比べ、今やフィリピンに拠点を置くコールセンターは100社を超え、オペレーターの数は、10万人を超えるほどに成長。


友人によれば、一般の事務職の給料が約7,000P(約1万8千円)に対し、コールセンターでの初任給は約2倍の14,000P、さらにノルマ達成や無欠勤報酬など種々のボーナスが付随される。他の職種に比べて昇給も早く、1年半も勤めるとスーパーバイザーに昇格し、通常の4倍以上の給料になる。


もちろん、待遇のレベルは、個人の能力や企業のレベルによって変わるが、一般に、有名大学出身であれば、それだけ美しい英語や専門知識が身に付いていることが期待されるため、基礎研修をスキップしていきなり高いポジションで配属されたりと、厚遇されやすいとのこと。


また現在は、英語だけでなく、スペインやフランス、日本企業用に多言語対応コールセンターも新たに生まれ、更に進化を迎えているとのこと。


高付加価値のITや金融ビジネスに関するアウトソースは、依然としてインドが圧倒的な力を見せているが、一般にいういわゆる「ソフト」ビジネスにおいても、国の特性によってこのような役割分担が生まれていることが非常に興味深い。



余談だが、「花形」ともいえるコールセンターでの仕事にも、陰はある。時差に伴う不定期な労働時間や、欧米からのタチの悪い顧客による、人種差別的発言による嫌がらせなど、ストレスの高い職業としてもひそかに知られつつあるのだ。企業側も、従業員のモチベーションアップ施策として各種トレーニングプログラムや待遇の向上にやっきになっているとのこと。


横浜の自宅から渋谷の居酒屋の電話番号を尋ねたら、実は電話の先はマニラのコールセンターだった。
もしかしたら、そんなことが既に起きているのかもしれません。